人は年齢とともに全身の筋肉は少しずつ衰えますが、特に重要なのは「抗重力筋」=立つ・歩く・姿勢を保つ筋肉です。
筋肉量や筋力が加齢に伴って低下する状態を「サルコペニア」と呼ばれています。
特に意識したいのは、「太もも・お尻・ふくらはぎ・体幹」です。
- 太ももの前(大腿四頭筋):椅子から立つ、階段を上る、膝を支える。弱ると「立ち上がるのが大変」「階段がつらい」につながります。
- お尻(大殿筋・中殿筋):歩行時に身体を支え、骨盤を安定させます。弱ると歩幅が小さくなったり、ふらつきやすくなったりします。
- 太ももの裏(ハムストリングス):歩く、立つ、身体を前へ進める動作に関係します。
- ふくらはぎ(下腿三頭筋):歩くとき地面を蹴り出す重要な筋肉。足首の安定にも関係します。
- 体幹・背中(腹筋群・脊柱起立筋など):姿勢を保ち、身体のバランスを取ります。衰えると前かがみになりやすくなります。
- 足首・足趾の筋肉:見落とされがちですが非常に大切です。つまずきや転倒予防に関係します。
- 口・舌・喉の筋肉:高齢になるほど重要です。弱ると「噛みにくい・飲み込みにくい・むせる」などが起こり、低栄養にもつながります。
そして大切なのは、筋肉は年齢だけで衰えるのではなく、「使わないこと」で急速に衰えるという点です。
長時間座る・寝ている、外出が減る、食事量やタンパク質が減る、といったことが重なると筋力低下が進みやすくなります。
逆に、高齢になってからでも筋肉は刺激に反応するのです。
激しい運動でなくても、椅子からの立ち座り、かかと上げ、少し速めの歩行、片脚を横に上げる運動などを続けることには意味があります。
特に75歳前後から意識したいのは、単に「筋肉量を増やす」ことより、①立ち上がる力②歩く力③転ばない力④骨を守る力⑤食べて飲み込む力を維持することです。
そして筋肉を守るには運動だけでは足りません。タンパク質、十分なエネルギー、ビタミンDなどの栄養と睡眠も重要になります。
次に、「75歳から特に落としたくない筋肉7つ」と、それぞれを守る簡単な運動+食事についてお伝えします。

75歳前後からは「筋肉を大きくする」こと以上に、自分の足で立つ・歩く・転ばない・食べる力を守ることが大切です。
75歳から特に落としたくない「7つの筋肉」
| 守りたい筋肉 | 衰えると起こりやすいこと | 簡単な動き |
|---|---|---|
| ① 太ももの前・大腿四頭筋 | 立ち上がり・階段がつらい | 椅子から立つ→座る |
| ② お尻・大殿筋 | 歩幅が小さくなる、立つ力が弱る | 椅子からの立ち座り |
| ③ お尻の横・中殿筋 | ふらつく、片足で支えにくい | つかまって脚を横へ上げる |
| ④ 太ももの裏・ハムストリングス | 歩く力が低下する | つかまって膝を後ろへ曲げる |
| ⑤ ふくらはぎ | 蹴り出す力が弱る | かかと上げ |
| ⑥ お腹・背中の体幹 | 姿勢が崩れる、バランス低下 | 背筋を伸ばして座る・歩く |
| ⑦ 舌・口・喉 | 噛みにくい、むせる、飲み込みにくい | よく噛む・声を出す・舌を動かす |
特に重要なのは「太もも+お尻」
高齢になって「足が弱った」と感じるとき、まず守りたいのが太ももとお尻です。
一番簡単なのは椅子からの立ち座り。
椅子に浅めに座る→足を肩幅程度にする→少し身体を前に傾ける→ゆっくり立つ→ゆっくり座る
最初は3〜5回でも十分です。慣れてきたら5〜10回へ。転倒が心配なら、安定した机などにつかまって行います。
これは単なる筋トレではありません。
トイレから立つ、食卓から立つ、ベッドから起きるという「自立した生活そのもの」を守る運動です。
「ふくらはぎ」も忘れない
台所などで安定した場所につかまり、かかとを上げる → ゆっくり下ろすこれを5〜10回。
ふくらはぎは歩行時の蹴り出しに重要です。
ただし、「第二の心臓」と呼ばれることがありますが、心臓と同じ働きをするわけではありません。
筋肉の収縮が静脈血を心臓へ戻すのを助ける、という意味です。
筋肉を作る「食べ方」がとても大切
運動をしても、材料がなければ筋肉は維持しにくくなります。
特に高齢になると、若い頃よりも十分なタンパク質を意識することが重要になります。
例えば、
朝:卵+納豆+ご飯+具だくさん味噌汁
昼:魚・鶏肉・豆腐など+野菜+ご飯
夜:肉または魚+大豆製品+野菜+ご飯
というように、タンパク質を夕食だけに集中させず、3食に分けるのがおすすめです。
卵、魚、肉、大豆・豆腐・納豆などを組み合わせれば、特別なプロテインを使わなくても十分に摂れる人は多いです。
そして高齢者では、「太らないために食べない」より「筋肉を落とさないためにきちんと食べる」ことが重要になります。
極端な糖質制限や食事量の減らしすぎは筋肉まで失う原因になり得ます。
そして、もう一つ大事な「筋肉」
それが口・舌・喉です。
身体の筋肉が元気でも、噛む・飲み込む力が落ちると食事量が減り、そこから食べられない→ 栄養不足→ 筋肉が落ちる→ 動かなくなる→ さらに食欲が落ちるという悪循環につながることがあります。
食事をよく噛む、家族と話す、歌う、音読する、といった日常生活も口周りの機能を使う機会になります。
むせが増えたり、体重減少や飲み込みづらさが出てきた場合は、自己流の訓練だけでなく医療機関への相談が大切です。
私なら「毎日の5分」をこう考えます
椅子の立ち座り5回 → かかと上げ10回 → 脚を横へ左右5回 → 家の中や外を少し歩く。
最初から回数を増やす必要はありませんが「少なくても毎日身体を使う」ことを生活に組み込むほうが続きます。
特に骨を守りたい年代では、筋肉と骨は別々に考えないことが大切です。
筋肉を使う→骨にも刺激が入る→転倒しにくくなるというつながりがあります。
「75歳から筋肉を減らさない1週間の食事」を特別な健康食品やプロテインに頼らず、普段の和食を中心に考えてみます。
大切なのは「肉をたくさん食べる」ことではありません。
毎食少しずつタンパク質を入れ、主食も極端に減らさず、野菜・海藻・きのこなどを組み合わせることです。
75歳からの「筋肉を守る1週間」
| 曜日 | 朝 | 昼 | 夜 |
|---|---|---|---|
| 月 | ご飯・納豆・卵・具だくさん味噌汁 | 焼き鮭のおにぎり・豆腐・野菜 | 鶏肉と野菜の蒸し物・ご飯・味噌汁 |
| 火 | しらす+卵のご飯・味噌汁 | 豚肉と野菜炒め・ご飯 | サバの塩焼き・大根おろし・ひじき・ご飯 |
| 水 | 納豆ご飯・卵焼き・野菜の味噌汁 | 鶏肉と野菜の丼・汁物 | 豆腐入り肉団子・青菜・ご飯 |
| 木 | ご飯・焼き魚・味噌汁 | 卵と鶏肉の親子丼・野菜 | イワシまたはアジ・冷奴・煮物・ご飯 |
| 金 | 卵・納豆・ご飯・海苔・味噌汁 | 豚しゃぶ+たっぷり野菜・ご飯 | 鮭ときのこの蒸し焼き・豆腐・ご飯 |
| 土 | 具だくさんおにぎり・ゆで卵・味噌汁 | 米粉のお好み焼き(豚肉・卵・野菜入り) | 鶏肉と根菜の煮物・青菜・ご飯 |
| 日 | ご飯・納豆・卵・味噌汁 | お寿司+茶碗蒸し+汁物 | 刺身または焼き魚・豆腐・野菜・ご飯 |
一番大切なのは「朝」
高齢になると、夕食には魚や肉を食べても、朝は「ご飯と漬物だけ」パンと飲み物だけと簡単に済ましがちですが、タンパク質の納豆や卵などを是非摂りましょう。

例えば、ご飯+納豆+卵+豆腐とわかめの味噌汁
これだけでも、かなり「筋肉を意識した朝食」になります。
具だくさんのおにぎりを作るなら、鮭・しらす・卵・ごま・海苔などを使うのも良い方法です。
「タンパク質だけ」では筋肉は守れません
ここは非常に重要です。
筋肉というと「タンパク質を摂ればよい」と思われがちですが、身体を動かすためにはエネルギーそのものも必要です。
食事量を減らしすぎると、摂ったタンパク質が筋肉の材料として十分利用されにくくなります。
ですから、ご飯などの主食+魚・肉・卵・大豆+野菜・海藻・きのこ+味噌汁などという昔ながらの食卓は、高齢期にも組み立てやすい形です。
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「手のひら」を目安にしてみましょう
細かく栄養計算をしなくても大丈夫です。
魚や肉なら、まずは1食につき手のひら程度を一つの目安にして、そこに卵・豆腐・納豆などを組み合わせます。
一般に高齢者では、病気などでタンパク質制限が必要でなければ1日のタンパク質を体重1kgあたり1.0〜1.2g程度確保することが一つの目安になります。
例えば体重50kgなら、50〜60g程度/日が目安となります。
ただし腎臓病などでタンパク質量を指示されている場合は、この数字をそのまま使わず、主治医や管理栄養士の指示を優先します。
食べたら「少し動く」
ここが今回一番お伝えしたいところです
食事+筋肉への刺激をセットにします。
朝食を食べる➡椅子から立ち座り5回
昼食後➡少し歩く
夕方➡台所などで、かかと上げ10回
この程度からでも構いません。
筋肉は「何歳だからもう増えない」というものではありません。
高齢になっても適切な筋力トレーニングと栄養によって改善が期待できます。
75歳からの合言葉
「食べる・立つ・歩く・眠る」
この4つを毎日繰り返す。
高価な健康食品よりも、毎日の普通の食事と、毎日の小さな運動を積み重ねることのほうがより自然で効果的です。
そして私は、ここにもう一つ加えたいと思います。
「人と話す」こと。
買い物に行く、料理をする、人と話す、笑う、家の中で役割を持つ――こうした生活そのものが、身体を使う機会になります。
「筋活」は、筋トレだけではなく、日常生活そのものを身体のトレーニングにする事です。
