糖尿病はどのように始まり、最後にはどうなるのか

糖尿病は、食生活と深い関係がある病気です。

特に日本人に多い「2型糖尿病」は、毎日の食事、運動不足、内臓脂肪、加齢、遺伝的な体質などが複雑に関係して発症します。

そして、糖尿病で本当に怖いのは、自覚症状がほとんどないうちに血管や神経に障害が起こり始めることです。

ただし、糖尿病には1型など別の種類もあり、すべてが食生活によって起こるわけではありません。

今回は食生活と関係の深い「2型糖尿病」を中心に、発症から重い合併症に至るまでをお話します。

1. 糖尿病が始まる仕組み

私たちが食事をすると、炭水化物が消化されてブドウ糖となり、血液中に入ります。

すると膵臓(すいぞう)から「インスリン」というホルモンが分泌されます。

インスリンは、血液中のブドウ糖を筋肉などの細胞に取り込ませ、血糖値を調整する働きをしています。

ところが、次の2つの問題が起こると血糖値が高くなります。

  • インスリン抵抗性:インスリンが分泌されても、筋肉や肝臓などで十分に働かなくなる。
  • インスリン分泌の低下:膵臓のβ細胞が、必要な量のインスリンを出せなくなる。

この2つが重なることで、糖尿病が発症・進行していきます。

日本人は欧米人と比べてインスリンを分泌する能力が低い傾向があり、必ずしも肥満でなくても2型糖尿病を発症することがあります。

2. 糖尿病の始まりから重症化までの6段階

第1段階:血糖調節に負担がかかり始める

自覚症状:通常はありません

食後の血糖値が上がりやすくなり、インスリンの働きが悪くなっていきます。まだ通常の検査では異常が見つからないこともあります。

第2段階:糖尿病予備軍(境界型)

自覚症状:ほとんどありません

空腹時や食後の血糖値が正常より高くなります。すでに動脈硬化のリスクが高まり始めていることがあります。

第3段階:糖尿病の発症

自覚症状:ない場合も多い

血糖値が糖尿病の診断基準に達します。高血糖が強くなると喉の渇き、尿の増加、疲れなどが現れます。

第4段階:血管・神経への障害

症状:目のかすみ、足のしびれなど

高血糖が長期間続くと、目の網膜、腎臓、末梢神経に障害が生じます。症状が現れないまま進行することもあります。

第5段階:重大な合併症

症状:視力低下、腎機能低下、歩行障害など

心筋梗塞、脳卒中、腎不全、足の潰瘍などの重い病気が起こる可能性があります。

第6段階:生命に関わる状態

症状:意識障害、重度の脱水など

高浸透圧高血糖状態や糖尿病性ケトアシドーシス、重い心血管疾患などによって生命が危険にさらされることがあります。

これは理解のために整理した一般的な流れです。

全員がこの順序で進行するわけではありません。

早い段階から合併症が見つかることもあれば、適切な治療で長年健康に暮らせる人もいます。

3. 糖尿病で現れる症状を詳しく知る

血糖値が高くなったときに起こる代表的な症状です。

症状なぜ起こるのか
喉が異常に渇く尿と一緒に水分が失われ、脱水気味になる
尿の回数・量が増える尿に糖が排出される際に水分も出ていく
食べているのに痩せる糖をうまく利用できず、脂肪や筋肉が分解される
疲れやすいエネルギーをうまく利用できない
目がかすむ高血糖によって目の中の水分バランスなどが変化する
傷が治りにくい血流や免疫機能に悪影響が出る
手足がしびれる長期の高血糖で神経が傷つく

特に、急に体重が減り、喉が渇いて尿が増えた場合は、糖尿病を疑って早めに受診する必要があります。

4. 糖尿病が進行すると、体のどこが壊れるのでしょうか

糖尿病の代表的な慢性合併症は、「し・め・じ」と呼ばれています。

し:神経障害

足先のしびれ、痛み、感覚の鈍さなどが出ます。感覚が弱くなると小さな傷に気づかず、感染や潰瘍につながる場合があります。

め:網膜症

目の奥の細い血管が傷つきます。初期は無症状ですが、進行すると視力が低下し、失明する場合もあります。

じ:腎症

腎臓の血管が傷つき、尿にアルブミンが漏れたり、腎機能が低下したりします。進行すると人工透析や腎移植が必要になることがあります。

さらに、糖尿病は心臓や脳の太い血管にも影響を与えます。心筋梗塞や脳梗塞などのリスクも増加します。

ただし、これらは必ず起こるわけではありません。血糖値だけでなく、血圧やコレステロールも適切に管理することで、発症や進行を抑えられます。

5. 糖尿病の「最後」とは何でしょうか

糖尿病には、がんのような一律の「末期」という段階はありません。

治療が不十分で重症化した場合、次のような状態に至る可能性があります。

  • 腎不全によって人工透析が必要になる。
  • 網膜症によって視力を失う。
  • 足の傷や感染が悪化して、切断が必要になる。
  • 心筋梗塞や脳卒中を起こす。
  • 極度の高血糖や脱水によって意識障害や昏睡に陥る。

特に強い口渇、多尿に加え、嘔吐、激しいだるさ、速く深い呼吸、意識がぼんやりする症状がある場合は、危険な急性合併症の可能性があり、救急受診が必要です。

意識障害がある場合は119番を呼んでください。

しかし、糖尿病と診断されたからといって、その先に必ず重い合併症が待っているわけではありません。

早期発見と適切な治療で、健康な生活を長く続けることが可能です。

6. 糖尿病を招きやすい食生活

食生活について、特に注意していただきたい点です。

食生活糖尿病との関係
砂糖入り飲料を頻繁に飲む糖を短時間で多く摂取しやすい
白米や麺類を大量に食べる食事の糖質量が過剰になりやすい
菓子や菓子パンを習慣的に食べる糖質とエネルギーの過剰摂取につながる
揚げ物や高脂肪食品が多いエネルギー過剰や体重増加につながりやすい
野菜や豆類が少ない食物繊維が不足しやすい
食べ過ぎが続く内臓脂肪が増え、インスリン抵抗性を強めることがある

ここで知っておきたいことがあります。

糖尿病は、白砂糖だけが原因ではありません。また、小麦、乳製品、植物油がすべて糖尿病の直接原因というわけでもありません。

重要なのは、食事全体の質、糖質の種類と量、総エネルギー量、食物繊維、そして運動とのバランスです。

7. 食の見直しで糖尿病を防ぐ方法

私がお勧めしたいのは、無理な糖質制限ではなく、栄養を十分に取りながら血糖値を安定させる食事です。

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主食は適量に

白米だけでなく玄米や大麦なども活用し、ご飯の量を調整します。主食を完全に抜く必要はありません。

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野菜・きのこ・海藻・豆類を増やす

食物繊維を十分に取ることで、食後血糖の急上昇を抑えやすくなります。

良質なたんぱく質を毎食取る

魚、卵、大豆、肉などを組み合わせ、筋肉を維持します。筋肉は血液中のブドウ糖を利用する大切な組織です。

食事以外でも、筋肉を動かすことが重要です。

無理のない歩行や筋力運動はインスリンの働きを改善します。

高齢の方は、食べる量を減らしすぎると筋肉や骨の健康を損なうことがあるため、特に注意が必要です。

8. 糖尿病を早く見つけるための検査

糖尿病は症状が現れる前に発見することが重要です。

検査項目糖尿病型の基準
空腹時血糖値126mg/dL以上
HbA1c6.5%以上
75gブドウ糖負荷試験・2時間値200mg/dL以上
随時血糖値200mg/dL以上

これらは「糖尿病型」の基準であり、正式な診断には原則として複数の検査結果などを組み合わせて判断します。

また、HbA1cが5.6〜5.9%でも、将来の糖尿病リスクが高まっている可能性があります。

糖尿病が疑われるときには、血糖値・HbA1cに加えて、腎機能、尿アルブミン、血圧、脂質なども確認することが大切です。

9. 糖尿病は食生活を改善すれば治るのでしょうか

ここは希望の持てるところです。

2型糖尿病では、食生活の改善、適切な運動、体重管理、必要に応じた薬物治療によって、血糖値を正常に近づけることができます。

一部の方では、薬を使わずに血糖値が糖尿病の診断基準を下回る「寛解(かんかい)」という状態に入ることもあります。

ただし、寛解は完全に治ったという意味ではなく、その後も検査と生活管理が必要です。

ただ、体重が減ったことだけで糖尿病が予防できたと断定することはできません。血糖値やHbA1cで確認することが大切です。

そして、私が特にお伝えしたいのは次のことです。

糖尿病の怖さは、病気が始まっても気づきにくいことです。

しかし、早く気づいて対策すれば、その後の経過を大きく変えられる可能性があります。

先ずは「食事の内容と仕方」を見直しましょう。

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