認知症は、ある日突然始まるものではありません。
加齢だけでなく、血管の健康、生活習慣、聴力、社会とのつながりなど、さまざまな要因が関係しています。
認知症を予防するために大切なのは、脳だけを鍛えるのではなく、食事・運動・睡眠・人との交流を通して、脳が元気に働ける身体を維持することです。
完全に防ぐ方法はまだありませんが、生活習慣を整えることで発症リスクを下げたり、発症を遅らせたりできる可能性があります。
今回は、何歳からでも取り組める「認知症になりにくい暮らし方」を、食生活を中心に具体的にお伝えします。
1.認知症予防のための7つの生活習慣
WHO(世界保健機関)は2026年7月、認知症予防に関する新しい指針を発表しました。
運動、食事、血圧・血糖の管理、聴力の維持、社会参加などを総合的に整えることを勧めています。
① 脳を守る食生活
魚、野菜、海藻、豆類、玄米などを組み合わせ、栄養不足を防ぐ。特に高齢期はたんぱく質不足に注意します。
② 毎日身体を動かす
散歩、家事、軽い筋力運動。座りっぱなしを減らし、足腰の筋力を保ちます。
③ 睡眠の質を整える
毎朝同じ時間に起き、朝日を浴びる。
睡眠は一般に7〜9時間を目安に、自分に合った十分な時間を確保します。
④ 人と話し、笑う
家族や友人との会話、趣味の集まりなど、社会とのつながりを持ち続けます。
⑤ 新しいことに挑戦する
読書、料理、文章を書く、語学を学ぶなど、考える機会を増やします。
⑥ 血管の健康を守る
高血圧、糖尿病、LDLコレステロールの異常を放置しないことで脳の血管を守ることが重要です。
⑦ 目と耳を大切にする
視力や聴力の低下を放置せず、必要に応じて眼科・耳鼻科で相談します。
2.脳を守る食の見直し
先ずは、和食中心の手作り生活が認知症予防の食事にも応用できます。
ただし、食事だけで認知症を防げると確立したわけではありません。
積極的に食べたい食品
青魚(EPA・DHA)
イワシ、サバ、サンマ、鮭など。魚の脂質は健康的な食事の一部として取り入れます。
大豆製品
納豆、豆腐、味噌、大豆。たんぱく質を補い、筋肉の維持にも役立ちます。
緑黄色野菜
小松菜、ほうれん草、ブロッコリーなどで葉酸、ビタミン類、食物繊維を補給します。

玄米・ナッツ・果物
食物繊維やミネラルを補います。ナッツは無塩のものを適量、果物は丸ごといただきます。
控えたい食習慣
- 甘い飲料や菓子を頻繁に摂る。
- 加工肉や塩分の多い食品に偏る。
- 揚げ物や脂質の多い食品ばかり食べる。
- 野菜やたんぱく質の不足に注意する。
- 食事を極端に制限して体重や筋肉を落とさないことです。
砂糖や加工食品を控えることは健康的な食事づくりに役立ちますが、特定の食品を完全に排除するだけで認知症が防げるわけではありません。
また、魚やナッツから適量の良質な脂質を摂り、可能な限りオリーブオイルなどの植物油は避けましょう。
3.腸内環境と認知症の関係
腸と脳は、神経、免疫、ホルモンなどを通じて互いに影響し合っています。これを「脳腸相関」と呼びます。
腸と脳のつながり
腸内細菌・腸内環境
免疫・神経・代謝を通じた相互作用
脳の働き・認知機能
腸内細菌と認知症の関係は研究が進んでいますが、特定の菌や発酵食品によって認知症を予防できるとまでは証明されていません。
普段の食事では、次の組み合わせがおすすめです。
- 発酵食品:味噌、納豆、ぬか漬け
- 食物繊維:玄米、ごぼう、きのこ、海藻
- オリゴ糖を含む食品:玉ねぎ、大豆、バナナ
腸だけに注目せず、食事全体のバランスを整えることが基本です。
4.75歳から特に大切な「筋肉と脳」の関係
筋力の低下は、外出機会や活動量の減少につながります。
身体を動かす習慣は、心臓や血管の健康だけでなく、認知機能の維持にも役立つと考えられています。
高齢になると様々な骨折に突然見舞われる可能性があるために、無理な運動よりも安全な動きの継続を大切にしてください。
毎日の軽い運動例
椅子に座って膝伸ばし左右各5〜10回。太ももの筋肉を意識する。
支えを持ってかかと上げ5〜10回でふくらはぎを鍛える。
短時間の散歩を痛みのない範囲で、少しずつ歩く時間を増やす。
手術後の運動制限がある場合には主治医・理学療法士の指示を優先し、痛みが増す運動は避けてください。
5.脳は「使い続けること」が大切
脳トレの問題を解くだけが認知症予防ではありません。
例えば、料理には次のような働きが必要です。
料理は複数の脳の働きを使う活動です。
献立を考える → 計画する力
材料をそろえる → 記憶する力
調理の順番を決める → 判断する力
味付けを工夫する → 創造する力
家族と食べる → 会話と交流
私は料理づくり、ブログ、Instagramへの投稿をすることから、考える・文章にする・新しい操作を覚えるといった、さまざまな知的活動になっています。
楽しみながら続けることに意味があります。
6.見落としやすい認知症の危険因子
食事や運動と同じくらい気にかけたいのが、目・耳・血管の健康です。
特に次の項目は定期的に確認しましょう。
| 確認すること | 対策 |
|---|---|
| 血圧 | 定期測定し、高血圧を管理 |
| 血糖値・HbA1c | 糖尿病を早期発見・管理 |
| LDLコレステロール | 必要に応じて治療 |
| 聴力 | 聞こえにくさを放置しない |
| 視力 | 白内障などを眼科で確認 |
| 睡眠 | いびき・無呼吸にも注意 |
| 転倒 | 頭部外傷を防ぐ |
これらは2026年のWHO指針でも重要視されています。
多くの人が罹患する白内障ですが、視力の低下は生活の活動範囲にもとても影響するため、眼科で適切に評価してもらうことをおすすめします。
7.認知症になりにくい1日の暮らし方
難しいことを増やすより、毎日の習慣として組み込むのがよいと思います。
脳を元気にする1日のモデル
- 朝 7:00|起床・朝日を浴びるカーテンを開け、水分補給。軽く身体を動かす。
- 朝 8:00|栄養のある朝食玄米、納豆、具だくさん味噌汁、卵など。
- 午前 10:00|身体を動かす安全な散歩や椅子での運動。
- 昼 12:00|昼食魚や豆腐、野菜を組み合わせる。
- 午後 14:00|脳を使う時間料理の研究、読書、ブログ執筆、友人との会話。
- 夕方 17:00|軽い活動や料理などの家事やストレッチ。長時間座り続けない。
- 夜 19:00|夕食食べ過ぎず、たんぱく質と野菜を十分に。
- 夜 22:00|就寝スマートフォンを早めに切り上げ、心身を休める。
- 物忘れが始まったらどうする?
年齢による物忘れと、認知症の初期症状には違いがあります。
加齢による物忘れの例
注意したい変化
名前がすぐに出ない
親しい人が誰か分からない
何を食べたか忘れる
食事したこと自体を忘れる
置き場所を忘れる
物を置いた経緯が分からず生活に支障が出る
ヒントで思い出す
ヒントがあっても思い出せないことが増える
ただし、これだけで診断はできません。
物忘れが増えて日常生活に影響する場合は、かかりつけ医やもの忘れ外来に相談してください。睡眠不足、薬の影響、栄養不足など、改善できる原因が隠れていることもあります。 - 認知症予防は、特別な健康食品や高価なサプリメントを使うことではありません。
2026年のWHO指針でも、欠乏症がない人に認知症予防だけを目的としてビタミン剤やオメガ3サプリメントを摂ることは推奨されていません。
大切なのは、食べる・動く・考える・話す・眠る。この5つを毎日続けること。
そして、もう一つ。
ご家族の介護をされている方は、ご自身の休息も大切にしていただきたいですね。
夜間の介助による睡眠不足が続くと、日中の集中力や記憶力にも影響します。
「脳を老化させないために頑張る」のではなく、「心も身体も喜ぶ暮らしを続ける」事、そんな考え方で毎日を整えていきたいですね。
